不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第6章 名前のない関係
「もしもし、ミライ?ごめんね、瀬川くんとデートだったのに…」
「ううん、私こそ気づくの遅くてごめん!今、別れたところなの。アンナ大丈夫?元カレくんとちゃんと話せた?」
「うん…やり直す事になった。私あんなに疲れるとか言ってたのに、結局…。ねぇ、どう思う?」
「良いと思うよ。…別れたときも、彼が浮気したわけでもなかったんでしょう?」
「結局スノボは行かなかったって言ってたけど…」
「アンナは彼が好きで、彼もアンナが好きなんだよね。アンナが不安なのは彼がモテるから?」
「浮気を疑ったり、彼が出かけるたびにモヤモヤするのが嫌なんだよね。私の理想とする付き合いではない。なのに彼のこと好きだし、戸惑っちゃうよ」
「理想の付き合いかぁ…」
「彼って優しいし外面も良いからさあ。言い寄られたら断れなそうっていうか…つまり、今わたし彼のこと信用できてないんだよね、多分」
「浮気が不安なお付き合いは確かにちょっと嫌だよね。メンタルが疲弊しちゃう」
「そうなのよ!ミライは瀬川くんのこと信用できる?他の女となにか起こることは無いだろうって思える?」
「うぅん……考えたくはないけど。無いと信じたい…」
「ごめん、変なこと言った…」
「ううん、全然」
アンナは彼に対し浮気が不安なことや、年齢差で少なからず劣等感を感じていたことを話したという。
「やり直すって決めたなら、一旦は彼を信じてみるかな、私なら」
「そうだよね。じゃなきゃつらすぎるもんねぇ…」
アンナとの電話を切ると、私は今日買ったばかりのローベッドに横になった。
瀬川くんへの信用…か。
私たちは他の異性と交わってほしくないと言う権利も無いし、お互い違う人とどうこうなったとしても受け止めないといけない関係なんだよね。
そもそもお互いが既婚者の状態で関係を持った私たちって…--。
いろいろな事を深追いして考えていくと頭が爆発しそうだ。
私は目を閉じて、さっきまでの楽しかった時間を思い返した。
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目が覚めると早朝4時頃で、私はあわてて携帯を確認する。
瀬川くんからの着信が1件と、おやすみのメッセージが入っていた。