不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第6章 名前のない関係
[瀬川くん、ごめんね!寝ちゃってたみたい…瀬川くんが着くまで起きてたかったのに…。この週末は色々ほんとうにありがとう。引越しも助かっちゃったし、デートも楽しかったです]
…ふと、アンナとの会話が脳裏をよぎる。
”他の女となにか……”
私は考えるのを強制的にやめ、メッセージを送信すると冷たい水を飲んだ。
まだ外は薄暗いが、調べてみると市役所の時間外窓口で離婚届を提出できる事を知り私は支度を始めた。
もう一度書類を確認し、これで最後になるであろうフミの書いた文字を見つめた。
さようなら、フミ…。
朝5時、私は家を出た。
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市役所の時間外窓口では守衛さんが待機していて、「おはようございます」と声をかけられた。
「おはようございます。あの…、離婚届を…」
書類を手渡すと、不備がないか内容を確認される。
「確かに、受け取りました。正式な受理は開庁する9時になりますが、離婚の日付は今日で変わりませんので」
あっけなく私とフミの離婚届は受け入れられ、あと数時間で正式に他人になる。
意外にも寂しさや虚無感はなく、通常通りの足取りで市役所を後にした。
アパートに帰り、ガス屋さんが来るまでまだ3~4時間はあるので少し仕事をしようとパソコンを立ち上げた。
瀬川くんからの着信で携帯が鳴り、私はあわてて電話に出る。
「もしもし?ごめんね、昨日、寝ちゃって…」
「ふふっ、おはよ。眠れたみたいで良かったよ」
私は離婚届を提出したことを伝え、瀬川くんの反応を待った。
「…そっか。うん。…とりあえず、お疲れさん。大丈夫か?」
「うん…」
「今日は家でゆっくり過ごしなよ」
「そうだね、うん…そうする。お料理でもしようかな」
「あ、キンパ?」
「ふふっ、そうだね!練習(笑)」
「今日、仕事終わったら電話していい?家にいるなら」
「もちろん。待ってるね」
「ん。じゃあ行ってくる」
「行ってらっしゃい」
どこかすっきりしたような、晴れやかな気持ちで電話を終えた。