ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第93章 誕生日の温泉旅行
「五条先生…?」
「ん?」
「もしかして、わたしのために露天風呂が付いたお部屋にしてくれたの…?その、わたしの身体が傷だらけだか…」
「ひな。」
わたしの言葉を遮って、五条先生がまたぎゅっと抱きしめる。
「俺がひなと入りたかったから。それだけだぞ。」
って言うけれど、絶対そんなことない。
大浴場だとわたしが身体の傷を気にしちゃって、ゆっくり温泉を楽しめない。
そう思って、どう考えても他よりグレードが高いこの部屋を選んでくれたんだ。
大切な誕生日の、五条先生との初めての温泉旅行で、わたしが人目を気にせず楽しく過ごせるようにって…。
「五条先生…、ありがとうございます。お風呂、五条先生とゆっくり入れてうれしいです。」
恥ずかしくても、ありがとうはちゃんと伝えたい。
勇気を出して振り返り、五条先生の目を見て伝えると、
「俺も。」
って、優しく微笑みながら、わたしがのぼせる寸前まで、ずっとぎゅっとしてくれた。