
ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第96章 偉大な母
「怖かったわね。」
わたしを胸の中に収めたお母さんはただ一言。
しゃぼん玉みたいに優しく透き通ったお母さんの声は、しゃぼん玉みたいにわたしの耳へと漂ってくる。
そして、それが耳元で弾けて割れると、わたしの目から落ちた涙がお母さんの服の上で弾けた。
「お…母さん……グスッ、グスン…」
「ひなちゃん。」
余計なことは何も言わず、しゃくり上げて泣くわたしの背中をぽんぽんしたりさすったり。
わたしが何も言わなくても、お母さんはわたしの気持ちがわかるみたいで、お母さんが何も言わなくても、わたしの恐怖や不安は次第に和らいでいった。
30分、1時間、それ以上…
お母さんに身を預けて泣き続けたら、目が真っ赤に腫れたかわりに、心も幾分か晴れてきて、
「お母さん…」
わたしからお母さんに声をかけた。
