ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第106章 すれ違い
「五条先生もね、ここ数日元気ないよ。」
「えっ?」
「ひなちゃんと同じような顔してる。でも、悠仁も何でもないって言うんだよね。」
ゆっくりと鉄剤を投与しながら、藤堂先生が落ち着いた声で言う。
「患者さんの心をケアするのも、主治医の大事な仕事なんだ。それに、大切な2人に元気が無いのは、やっぱり見てて心配かな。」
少し苦笑いするように、優しく微笑む藤堂先生。
「無理にとは言わないけど、話してみない?」
注射の最中で藤堂先生の手は塞がっている。
それでも頭や背中を撫でてもらっているような、この抱擁感。
わたしは自然と口を開き、五条先生とのことを話した。