ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第111章 ポリクリ
「ひなちゃん、少しお話させて。」
体の向きを少しこちらに座り直す藤堂先生。
横並びで座る藤堂先生の膝が、わたしの膝に少し当たる。
「ごめんね、ひなちゃん。突然実習が中…」
「今からワクチン打てないですか?すぐに打てば有効なはずなんです…。」
この難を逃れる方法が何かないのか。
麻しん患者と接触した場合、72時間以内であれば緊急ワクチン接種という手があったはず。
頭の引き出しを全部開けて、どこで覚えたかも覚えてない知識を引っ張り出して投げてみる。
でも、
「緊急予防接種は有効だよ。よく勉強してたね。でも、ひなちゃんにはやっぱり接種してあげられない。」
「……。」
ここで接種できるなら、きっと最初からそうしてる。
そんな可能性初めからあるわけないのに、食い気味に聞いてなんでこんなバカなんだろう。