ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第111章 ポリクリ
五条先生がわたしの背中に優しくそっと手を添える。
声のトーンが急に変わって、怒られるのかと思ったのに、
「ひなな、ちょっと、1回深呼吸してごらん。」
落ち着いた声と温かい手に包み込まれて、思わず顔を上げてしまう。
「朝からずっとパニックになってるだろ。ひなは今、どうしてここにいるんだっけ?自分で説明できるか?」
「……。」
言われてることはわかるけど、口がうまく開かない。
五条先生の目を見つめて、口をキュッと一文字に結ぶ。
「身体の調子が悪くてここにいるわけじゃないだろ?食事しないで身体が弱ったら、麻しんにならなかった時どうするんだ。」
「……。」
「ひなは今、感染の可能性があって健康観察のためにここにいるだけ。それなのに、全然関係ないところで引っかかって、ポリクリに戻れなくなったらどうする。」
「……。」
「飯はちゃんと食わないと、元気なものも元気じゃなくなる。ほら、ひなの好きな卵焼き。」
そう言って、五条先生はわたしの口に、厚焼き玉子をひとくち運んだ。