ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第111章 ポリクリ
口元に持って来られた厚焼き玉子は、反射的に開いた口の中に収まった。
ほわっと広がる、微かな甘み。
モグ…モグ……
噛むと、さらに広がる、ほのかな甘み。
モグ、モグ……モグモグ……
いつも食べてるこの卵焼きは、美味しくて好きだけど、普通っちゃ普通のなんでもない卵焼き。
今日だって、いつもと変わらぬ味をしている。
それなのになぜか、
「……グスッ……グスン…ッ」
さっきから喉の奥が苦しくて、鼻の奥がツーンとして、
「グスン…、グスン…ッ…」
何か特別なものでも食べたみたいに、ぽろぽろ涙が溢れてきた。