ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第17章 見失う自分と生い立ち
「栗花落…、杏寿郎…。」
「な?珍しい苗字も同じだろ?」
「本当に、わたしのひいおじいちゃんがこの病院を作ったんですね。」
「こっちもあるぞ。栗花落義勇、これがおじいちゃん。そしてこれが、お父さんとお母さんだ。」
「お父さんとお母さん…」
すごい…
こんなお医者さんだったんだ。
みんな本当にお医者さん…
「お父さんとお母さんのこと、お前はダディーとマミーって呼んでたぞ。」
そっか、そうだったんだ。
って…
「五条先生?なんでそんなことも知ってるんですか?」
「え?あ、いや、俺の父親もここの医者で、お前の両親とはアメリカで一緒に働いてたんだ。だから、その、話を聞いたことがあって…。」
「え?そうなんですか?じゃあ、五条先生は昔からわたしのこと知ってたんですね。」
「あぁ、まぁな…」
それから五条先生は、この資料室も、元々ひいおじいちゃんの家だった場所を、おじいちゃんが亡くなる前に資料室にしたって教えてくれた。
ノワールの歴史的な資料だけじゃなくて、本や論文もたくさん保管されてる。
この病院の図書館みたいになってるみたい。
とにかく、みんな素晴らしい医師だったって。
何度も何度もそう言ってくれた。
そして、みんなに愛されてたことも。
うれしくてうれしくて、話を聞き終わる頃にはたくさん涙を流してた。
「疲れただろ。大丈夫か?しんどくないか?そろそろ部屋戻るぞ。」
どのくらいここにいたかわからない。
たぶん、1時間以上はいた。
車椅子に乗せてもらって、五条先生と病室へ戻った。