ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第17章 見失う自分と生い立ち
_____翌日
相変わらず食欲はなくてほとんどごはんを残した。
それでも、いつも通り回診を終えると、五条先生がわたしを車椅子に乗せて散歩に連れ出してくれた。
エレベーターの前に来て、五条先生はなんなくボタンを押す。
「このボタン届かないだろ?小児科はお前みたいに脱走する子どもがいるから、子どもが届かない位置にボタンを設置してあるんだ。」
「そ、そうなんですか…」
「それと、非常階段は非常用だ。もう使うな。」
「はい…」
と若干お説教をされて、エレベーターに乗り込んだ。
降りたのは3階。
夏樹くんの言ってた中庭があって、芝生が気持ち良さそうだったけど中庭には行かず。
着いたのは、"資料室"と書かれた部屋。
中に入ると、古い昔の建物みたいで、床には赤い絨毯が敷いてあって、五条先生はガラスのショーケースの前で止まった。
「立てるか?ゆっくりな。」
と、五条先生に支えられながらゆっくり立ち上がってショーケースをのぞく。
「これ見てみろ。」
たくさんの書物や写真が並ぶ中、五条先生はひとつの写真を指さした。
白黒の写真には、この病院の前に若い男の人が立っている。
そして写真の下には、
"ノワール国際病院 創立者 栗花落杏寿郎"
というプレートがあった。