ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第29章 人海戦術
そして、夜。
コンコンコン___
きっと、藤堂先生だ。
ガラガラ___
「ひーなちゃん。こんばんは。」
ほら、やっぱり…
わざと五条先生が来ないようにしてるんだ。
そんなことしたって無駄だから。
「ひなちゃん、一緒に吸入行こうか。」
「行きたくないです。」
「どうして行きたくないの?先生に教えて?」
うぅ…。
藤堂先生のその優しい声は調子が狂いそうになる。
「今さら吸入したって修学旅行には行けないので。」
「だけど、今のままじゃお家にすら帰れないよ?早く退院したいでしょ?」
うぅ…。
家には帰りたい。
退院したい。
でも、ここで素直になったら負けた感じがする。
「…帰れなくていいです。というか、なんで五条先生は来ないんですか?わざとですよね。みんなわたしの機嫌を戻そうとして順番に来てる。」
「ふふっ。ひなちゃんはやっぱり賢いね。じゃあ、五条先生呼んでくるね。」
と藤堂先生が行ってしまった。
まずい、そうなってしまったか。
やられた…