ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第30章 意地っ張りの代償
病室に戻ってきてベッドに降ろされる。
「熱測るな。」
五条先生はわたしの背中を支えながら、器用に片手でパジャマのボタンを2つ開けて脇に体温計を挟んだ。
五条先生の手が少し冷んやり感じる。
熱を測ってる間は脇を軽く押さえられて、手首で脈も測られてた。
ピピッ…
音が鳴って体温計を抜いたあとは、残りのボタンも全部開けて聴診してる。
わたしは涙を流しながらずっとうつむいてるのに、五条先生は昨日のことなんてなかったみたいにいつも通り診察する。
そして聴診が終わると、両手で優しく顔を挟まれて、そっと上にあげられて、五条先生とついに目が合ってしまった。
「こんな熱出てフラフラになってしんどかっただろ?」
しんどいって自覚はなかったけど、そう言われた途端、
自分の身体や鼻から抜ける息が熱いことにも、
胸からヒューヒュー音がしてることにも、
肩で息してることにも気がついて…
「…ぅ…うぅ……ごじょぉせんせぇ…ヒック…」
「夜も発作起きて苦しかったんじゃないか?意地張るのも大変だったろ。ひとりで辛かっただろ?」
うん。すごくつらかった。
身体のつらさもだけど、何より心がつらかった。
素直になれない自分が嫌になった。
五条先生が来てくれないのも本当はすごく寂しかった。
コクッと頷くと、五条先生の胸に顔が引き寄せられた。
「もう大丈夫だから。早く元気になって一緒に家帰るぞ。」
「ぅ…ヒック、五条先生…う…うぅ…、ごめんなさぁぃ!!…ヒック、ヒック、グスン…ケホケホ…ハァハァ」
「よし、ひな横になろう。心配しなくて大丈夫だから、呼吸だけゆっくりしっかりしてな。」
と言って五条先生はわたしを横に寝かすと、ナースコールでいろんな指示を出した。