ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第57章 呼び起こされた過去
「寒っ…!」
だけどここ(屋上)はやっぱり気持ちいい。
今日は雪も降ってなくて綺麗な青空が広がってる。
いつもの場所に腰掛けて、ぼーっと空を眺めた。
空はこんなに綺麗なのに、わたしの身体は汚れてる。
美しいものを見ると自分の汚さが際立つようだった。
どうしてわたしの身体はこんなに汚れてるんだろう。
どうしてこんなに汚されちゃったんだろう。
それにこのことは、身体の表面にできた傷のように治せるものじゃない。
身体の傷より、心に、魂に負った傷が深くて、もうどうしたって治すことはできない。
ただただ絶望感しかなくて、なんとも形容しようがない。
「はぁ…。」
悲しみも通り越したはずなのに、ひとつついたため息とともに、涙が出てきて袖口でそっと拭いた。
そしてまた顔を上げると、今度は五条先生と住むマンションが目に入る。
「五条先生…」
ポタッ…、ポタッ…
目から溢れる涙はいつしか大粒に変わってて、カーディガンの袖口もびしょ濡れ。
拭いても拭いても追いつかなくて、コンクリートの地面に雨粒みたいに落ちていく。
「グスン…、グスン…、ハァ…グスン…。」