ひなとDoctors 〜柱と呼ばれる医師たち〜
第10章 眠れない夜
「ずっと起きてたのか?」
夜だからか、少し小さめのボリュームで話す五条先生の声はすごく優しかった。
コクッ…
わたしはそっと頷く。
「いつも夜になると眠れないんだろ?何で寝れないんだ?」
五条先生、夜はいつも寝れないって気づいてたんだ…
夜はあの人がずっと家にいた。
いつ部屋に来て何されるかわからないから、怖くて目なんか閉じてられなかった。
夜中に酔っ払って帰ってきたあの人に、殴られたり蹴られたりよくしてた。
1番怖かったのは、たしか4年生くらいの時だったかな。
馬乗りで腕を押さえつけられて、抵抗したら殴られて。なぜかズボンもパンツも脱がされて、なにをされてるのかわからなかったけど、とにかくとんでもない激痛が走ったのは覚えてる。
もう二度と味わいたくない痛み。
直感的に殴られたり蹴られるよりも酷いことが、自分の身体に起きた気がした。
そのあとにすぐあの人の女がきて、
"そんなガキ相手にしないで、わたしとしてよ!"
ってあの人は女に引っ張られて行ったから、結局すぐ解放されたけど…
思い出すと今でもあれが1番身震いする。
それに、夜は咳が出ることも多くてうるさいって怒られるから、必死に布団に潜って止めたりしてた。