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病院の風景

第8章 身体を清潔に

黒田が出て行った後、人に会ったのは、ご飯の準備に来た男の看護師だけで、あとは誰にも会わずに午後まで過ごした。トイレに行ったとき、遠くに看護師の姿が見えただけだ。

午後2時になると時間通り黒田が台車を押して現れた。

「石川さん、身体を拭く準備をして来ましたが今大丈夫ですか?」

と言った。石川は、

「はい!大丈夫です!」

と言うと、黒田は、カーテンを半分開けて入って来て準備を始めた。ポリバケツのお湯に身体を拭くタオルを入れて絞り、

「お腹は大丈夫ですか?」

と聞いた。石川は、

「あまり動かなければ大丈夫です!」

と答え、黒田は、

「上半身脱げますか?背中を私が拭きますが!」

と言いタオルを広げた。

石川は、のそのそと着ている甚平とシャツを脱ぎ、上半身裸になると黒田の方へ背中を向けた。

黒田は、

「それでは失礼しますね!」

と言って絞ったタオルで石川の背中を拭いた。石川は、背中が痒かったのでゴシゴシ拭いてくれる黒田の力加減が気持ち良く思った。黒田は、一通り背中を拭くと、

「前は、ご自分で拭けますか?」

と言った。石川は、黒田がもう一度絞ったタオルを受け取ると、腕、脇、胸を拭いた。お腹は既に手術後のガーゼも取れ、傷痕が見えている。お腹は痛いので軽く拭いた。そして、スボンを脱いでパンツだけの姿になると脚も自分で拭いた。足の指も拭こうとするが、それ以上屈むとお腹が痛い。その様子を見た黒田は、

「足、私が拭きましょうか?」

と言った。石川は、

「良いんですか?」

と言うと、黒田は、

「仕事ですから、大丈夫ですよ!」

と言って、石川からタオルを受け取ると、足と指を拭いた。石川はくすぐったくて、足がぴくっと動いた。

黒田は、

「くすぐったいですか?我慢して下さいね!」

と言って、笑顔を見せた。たぶん始めて見た笑顔だと思うが、感じが良い笑顔だと石川は思った。

そうしているうちに、両足を拭き終わった。

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