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「あーあ、男と寝たい～ッ！」
佳代が、かわいい細い腰をくねらせて、少し大きめの声で言った。
「わ？痴女？」
と傍らの奈美が、両太ももを揺らしながら、やんわりとたしなめる。
「奈美チン、きれいごと言っちゃダメだよ？さっきから男を物色してるくせに、ほら、その目！」
と由紀が、低身長なわりに巨乳な胸を突き出し、奈美を揶揄する。
「あー！なんで私たち、男に縁がないのかなー？かな？」
と真美が、形の良いおしりを突き出しながら、ため息。
「あたし、アソコがうずいてうずいてしょうがないよ～」
と梨子が、股間を指で弄りながら、顔をアヘアヘさせる。

佳代・奈美・由紀・真美・梨子の５人は、中学２年生の仲良し５人組。
夏休み終了まであと１週間という、平日の午前９時半ごろ。
５人で海に遊びに来ていた。
この日は、南の海上に台風があるせいで波やうねりが高く、遊泳禁止の立札が出ていた。
その立札の前で、５人はぼうぜんとしていたのである。

さてこの５人、全員が、トンデモ美少女であった。
遊泳禁止を知らないでやってきた人間たち、特に男子たちは、この５人を見かけてはめちゃくちゃな注目視線を送ってくる。
しかし男子たちは、なぜかまったく声をかけてこない。
この５人は、あまりにも美少女過ぎて、どうせ彼氏がいるだろうとか、どうせ俺たちとは縁のない高嶺の花だとか思われていたのだ。

「ふうううう…」
ため息をついた佳代の視界に、ふと入った人影がある。
見て、佳代は、釘付けになった。
その視線の先に、ひとりの大学生風の男子がたたずんでいた。
彼は、イケメンではない。どちらかというと、目立たない風采の上がらない、目を凝らさないと風景に埋没してしまうような地味な感じだった。

「どしたの？佳代ちゃん」
奈美が幼い顔だちで首を傾げ、佳代が見ている方向を見る。
奈美は、その瞬間、佳代と同じく目が釘付けになった。

「どした？どした？」
と言う由紀も、同じように目が釘付けになった。
そしてもう２人、真美と梨子も、既にその男子に目が釘付けになっていた。

これは、いったいどういう珍現象なのか？
いや、何のことはない。要するに、５人の女子がひとりの男子に同時に一目惚れしただけのことであった。
恋とは、不思議なものである。イケメンでもないのに、なぜか恋に落ちてしまう。
けっきょく恋とは、運命の出会いなんだろう。