テキストサイズ

ママ、愛してる

第7章 エピローグ

「それじゃ、店はどうするの?」

僕が尋ねると、

「由香にあげるよ。まあ、昼間の子守りくらいはしてあげるよ」

「ママ・・・」

由香が涙ぐむ。

「由香にはホントに助けられたからね。感謝してる。店の一軒くらいじゃ追い付かないよ」

「ママ、そんなこと言わないで。ママのお陰で、あたし大学も行けたし、素敵な家族も出来たんだから。ねえ、幸介」

「僕も、由香のお陰で、幸せな家庭を築けた。ありがとう」

僕は、昔を振り返る。

あの時母は、本当に何も言わなかった。

そして、当たり前のように、変わらず僕たちと接してくれた。

もちろん、あの日以来、母と関係を持つことはなかった。

当たり前の親子として、僕は母と暮し、由香はアパートに住み続けた。

大学を卒業した由香は、喫茶店をチェーン展開する会社でノウハウを学び、一年後に母の喫茶店に入った。

僕が高校を卒業し、大学の入学式の日に、由香と入籍。

由香はアパートを引き払い、三人で住むことになった。

翌年、由紀夫が生まれる。

僕は、大学を退学して働くつもりだったが、母と由香は猛反対。
毎朝喫茶店は手伝っていたが、卒業まではいわゆるヒモ状態だった。

卒業後は、喫茶店のマスターとして本格的に見るようになり、由香とふたりで店に立つようになった。
母はオブザーバーのような形で、由紀夫の面倒を見ながら、僕たちを支えてくれた。

そして今、母は新しい幸せに向かって歩き出そうとしている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ