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ママ、愛してる

第7章 エピローグ

「久しぶりに逢わない?
家の近くのY渓谷って、桜の名所なのよ。今、ちょうど満開で、見頃なのよ」

4月に入ってすぐ、玲子先生から電話が掛かってきた。

「そうですねぇ、じゃあ伺います。
何処にも行く予定無いし」

あたしは答える。
考えてみれば、ずいぶん失礼な言い方をしたものだ。
いくら、特別な関係があるとは言え、年上の女性に向かって
何処にも行く予定が無いから、なんて。

いつものあたしなら、絶対にそんな口のききかたはしなかった。



宮崎から帰って来てから、

あたしは脱け殻のように過ごしていた。

毎日、昼頃に起きて、パパが用意してくれた朝食を、リビングでテレビを観ながら食べる。

別に観たいから観るのではなく、静寂が嫌だから掛けてるだけ。

主婦向けのくだらないワイドショーや昔の時代劇やドラマの再放送。

集中なんて出来ないから、内容ももわからない。
ただ、画面の中で、人や車なんかが動いてるだけ。

夕方からは、パパの晩御飯を作る。

じっとしてると、気が変になりそうだったから。

パパの帰りを待つこともなく、1人で夕食を済ませて、部屋にこもってベッドに横になる。

後は、CDを掛けたり、携帯でYouTubeを観ているうちに、時間が、ただ、過ぎていく。
でも、それにも集中する事なんて無くて、
いつの間にか玲子を思い出している。

玲子とのセックスは、あたしには強烈な記憶だったが、不思議と余り思い出さない。

頭に浮かぶのは、玲子の優雅な姿。

レストランでの洗練された所作や、
包み込むような穏やかな声や話し方。

タバコを吸う仕草すらも美しかった。

いつも、あたしに掛からないように、反対を向いて紫煙を吐いていてくれたっけ。

おもいだしながら、あたしは涙に暮れる。

玲子、戻ってきて・・・。
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