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変態ですけど、何か?

第12章 再会と出会い

「あたし、クラシックが大好きで、高校時代の音楽の先生に、いろんな事を教えてもらったんです。
だから、たまたま乗り合わせたタクシーの運転手さんと、こんな話ができるなんて、ちょっと運命を感じちゃいます」

あたしは、少し興奮気味に言った。

「そうなの?お客さんとは、一度ゆっくりお話したかったわね」

「あたしもです。周りにはクラシックの話ができる人、全然いなくって」

「私もそうですよ。タクシーの運転手って、ほとんど男性で、話題と言えばギャンブルや野球の話ばっかりでね。
だから今は、帰ってから、一人でCD聴いたり、ピアノ弾いたりするくらい。だから、お客さんとこんな話が出来て嬉しいわ」

靖子が言う。

「ピアノも弾けるんですね」

「音大の課題曲くらいはね。今は電子ピアノで、お隣さんに遠慮しながら、ヘッドフォン付けてだけどねえ。古いマンション住まいだから」
靖子は、自嘲気味に答えた。

「それでも素敵です。
あたしも、運転手さんと、いろんなお話してみたいなあ」
あたしは、本心から言った。

音楽の話題が盛り上がっている間に、タクシーは自宅に着いた。

あたしは、一万円札を渡して、言った。
「ごめんなさい。慌てて飛び乗ったから、細かいの持ってなくて・・・」

靖子は、笑顔で答える。
「いいんですよ。ちゃんとお釣りは用意してますから」

そう言ってお釣りを差し出しながら、靖子が言った。
「ドライバーから、こんなこと言ったらいけないんだけど、よかったら一度会いましょうか?
タクシーって、不規則な勤務だから、なかなかスケジュール合わないかも知れないんだけど」

「ホントですか?うれしい!是非、お会いしたいです」
あたしは、有頂天になって答えた。

お互いの電話番号を交換して、あたしは、タクシーを降りた。

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