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不倫研究サークル

第10章 不倫

ハッ、として目を覚ますと、僕の隣で佳那も寝ていた。

三回目の後、僕たちは疲れはてて眠ってしまったようだった。

(今、何時だろ?)

キョロキョロと部屋の中を見渡し、時計の存在に気づく。

(4時!?)

僕たちが寝室に入ってから、四時間が経過していたことになる。

「佳那さん」

「佳那さん」

佳那を揺り起こすと、『うう~~ん、なに?』と呑気な返事をする。

こういう反応は陽菜とそっくりだと思ってしまうが、それどころではない。

「佳那さん、もう四時です。 陽菜が帰ってきますよ」

僕の言葉に、バっと佳那も飛び起きた。

「いっけなーい、ごめんなさい、わたしまで寝てしまって」

「ご飯もまだなのに、お腹空いたでしょ?」

「いえ、そんな事より、僕は早く帰らないと」

この時間までここに居る事は、不審以外の何ものでもない。

僕も、佳那も、慌てて脱ぎ散らかした服をかき集め、身支度をした。

佳那は、髪を整えながら、部屋の中をチェックし、急いでまとった衣服の乱れを正した。

僕も、自分の衣服の乱れを直し、同じように部屋の中を見渡す。

丸めたティッシュが散乱している事に気づき、慌ててそれらを拾い集め、くずかごへと放り込んだ。

「ごめんなさいね、ゆっくりできなくて」

「いえ、佳那さん、素敵でした」

「まあ……」

佳那は僕に抱きついてくると、唇を合わせてきた。

僕も応じるが、今度は柔らかい交わりのキスだった。

(キスにも、いろんな形があるんだ……)

いま僕らが交わしているキスはクールダウンのキス、そして、セックスの前のキスはウォームアップのキス。

セックスの最中のキスは、行為そのものに準じるキス。


もっと、もっと、経験を積みたい。そんな思いが僕を支配していた。


「ねえ、圭君。こうやって、たまに愛し合えるかしら?」

「はい、僕も、こういう時間が欲しいです」

そして、再びキスを交わす。これは約束を交わすキスだ。


先ほど、人が不倫する理由について考察してみた。

だが、詭弁にすぎない。


僕は不倫を始めてしまったのだ。

ただ、自分を肯定したかった……。




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