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不倫研究サークル

第11章 リケジョ

「え……と、たしか、この辺だったような……」

岸本に連れられて一度来ただけなので、場所があやふやだった。
愛莉の前でカッコ悪いところを見せたくないのだが、東京の土地に慣れていないのは如何ともしがたい。

不味いな……、と思い、綾乃に電話をかけると、迎えに来てくれると言うので、その場で待つことにした。

「カテマッチって、女の社長が一人で経営してるって聞いたんだけど、本当なの?」

「ええ、それも若くて美人で、まさに完璧な女性と言った感じです」

「へ~」と愛莉の目が冷たくなる。

「え? どうかしました?」

「なんか、わたしへのお世辞と言い方が違う。 森岡君って、もしかしてその人の事が好きなの?」

「ええーー、そんなことある訳ないじゃないですか。 全然、世界が違いますよ」

「住む世界じゃなくて、森岡君の気持ちを聞いてるんだけど、その反応で分かったわ」
「でも、どんな人なのか、興味が湧いてきた 笑」

愛莉は、そう言って笑って見せたが……、目が笑ってない。

やはり、リケジョの行動はよく分からない、と僕は再認識した。


「圭君」

声をかけてきたのは綾乃だった。

「あ、綾乃さん。 すみません、面倒をかけてしまったて」

「いいのよ、事務所も分かり辛い場所にあるし」

と言いながら、僕の腕に絡めている愛莉の手に視線をやった。

「彼女が、今日、紹介したい子?」

「はい、川本愛莉さん」と、僕が紹介するまでもなく、愛莉が前へ出て自ら自己紹介した。

「川本愛莉です。 今日は、お時間を取っていただき、ありがとうございます」

「宮下綾乃です。 あ、お話は事務所で、こちらです」と僕たちを連れ立つ。

綾乃が現れたと言うのに、愛莉は僕の腕に手を絡めたまま、綾乃についていく。

時折、綾乃が振り返って僕たちがついてきているのか、確認する。その時、心なしか僕の事を睨んでいるような気がした。

やはり、デートの約束を反故にした事を怒っているのだろうか?


少し、不安がよぎった。

(これは、素直にあやるしかないな……)

「ねえ、宮下社長、ちょっと怖い顔になってない?」

「う、うん……そうですね……」

「わたし、なにか怒らせたかな?」


「いや……たぶん、原因は僕です」




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