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不倫研究サークル

第12章 女社長

予想通り、僕が初めて綾乃に会った時連れてこられたレストランに、僕たち三人はいた。

学生には敷居の高いお店だ。愛莉の反応も予想通りだった。


「心配しないで、好きなものを選んでね。 ここは会社の経費で落とせるから」

「あ、でも、この間もご馳走していただいたし……」

「それは、今度、ちゃんと埋め合わせしてくれるんでしょ?」
綾乃はいたずらっぽく首を傾げながら笑った。


「埋め合わせって?」愛莉が訝しげに僕を見る。

「いや、大したことじゃないんです。 ここは、宮下さん言葉に甘えましょう」

僕は、誤魔化して見せたが、愛莉はまだ何か言いたそうだった。

「私はワインをいただくけど、あななたちは?」

「ぼ、僕はジュースで」

「わたしは……」

「森岡君は、相変わらずお子様なのね、変なとこだけオトナになったみたいだけど 笑」
「川本さん、飲めるのだったら、付き合って」

「はい、では、わたしもワインをいただきます。」


料理が運ばれ、僕たちは乾杯をする。綾乃が白、愛莉が赤のワイン、僕はメロンジュースと三つのグラスがカチカチと鳴った。


「ところで、川本さん、あななたちって付き合っていないの?」

先ほども僕に確認していたが、まだ信用していないのか、今度は愛莉に尋ねる。

「ええ、わたしたち、会うのは二回目だし、そんなに親しくないです」

「そ……うなの、腕を組んでいたから、てっきり親しいのかと思ったわ」

「あれは、近くを歩くとき、ああした方が歩きやすいからです。それに、森岡君には好きな人がいるみたいだし、わたしの事を相手になんてしないと思いますよ」

愛莉が含みのある言い方をするが、僕には彼女が誰の事を言っているのか、見当もつかなかった。

「宮下社長の方が、ご存知じゃないんですか?」

「私が?」

「森岡君んの好きな人の事を、です」

「よくわからないわ。 私の知っている人? まさか、森岡君……、ゲイなの?」

「な、なんで、そうなるんですか!?」

僕は、思わずジュースを吹き出しそうになった。

「だって、私たちの共通の知人と言えば、岸本君くらいしかいないから」

僕たちの会話を聞いていた愛莉がクスクスと笑った。


「森岡君って、たぶん、宮下社長の事が好きですよ」

「冗談が過ぎるわ、川本さん」

綾乃は一笑に付した。




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