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不倫研究サークル

第13章 それぞれの道

「その……、愛莉……、カレシと別れて、僕と付き合う事ってできないかな?」

その日の二回戦の後、僕は自分の気持ちを打ち明けた。もし、美栞と関係を結んでしまったら、愛莉とはこのまま曖昧な関係を続けることになるだろう。

今なら、愛莉以外との関係を全て絶って、お互いに恋人同士になれる。

でも……、

愛莉は僕の言葉に、背中を向けた。

「わたしね、圭で二人目なの、経験したの」

愛莉は後ろ手に僕の手を握ると、自分の胸の前に引き寄せ、両手で握りしめた。


「カレシは、中学の同級生で、彼から告白されて付き合い始めたわ」

「……」

「すぐに、初体験も済ませて、それからずっと付き合ってる。 途中、何度か別れたけどね」

「じゃあ、別れることに抵抗はないんじゃない?」

愛莉は黙って首を振る。


「カレシ、高校も行ってなくて、あ、元々頭は悪かったんだけどね 笑」

「何をやってる人なの?」

「フリーターしながら、劇団に入って役者を目指してる」

何とも不安定だ、と僕は思ってしまう。人生設計もなにも考えていない、絶対に愛莉を幸せにできるはずがないと。

「フリーターだからって、馬鹿にした?」

「う、うん。 正直、愛莉を幸せにできるとは、思えない」

僕は素直な意見を言った。

「そうだよね。 アイツ、ヘタレでさ、いろんなことから逃げてばかりで、親にも見放されて……、多分、役者なんて無理だと、わたしも思ってる」

「だったら!」

僕は、つい声が大きくなる。


「でも、わたしが見捨てちゃったら、アイツ、一人だもん。 可哀そうだよ」

「そんなに、カレシのことが好きなんだ……」

もしかしたら、愛莉は僕のことが一番好きなんじゃないかと思っていたが、ハッキリと言われると、気持ちが沈んでしまう。

「だから、いつも言ってるじゃない、圭は二番だって。 圭だって、わたしの事が一番じゃないでしょ?」

「僕は……」

言いかけた僕の口を、振り向いた愛莉が、唇を合わせて塞ぐ。

「ね、お願い。今のままで居よう」

「分かった、ゴメン」

「ごめんなさい、この関係の方が、きっと長く続くと思うから……できるだけ圭との時間も作るから、許して」

「いや、僕の方こそ、自分勝手なこと言って、ゴメン」

「ね、まだできる?」

「うん、大丈夫」

三回戦が、始まった……。




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