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不倫研究サークル

第13章 それぞれの道

(な、なぜ……、鍋焼きうどん……なんだ?)

美栞と約束の日、僕たちは鍋焼きうどんを食べていた。

夏真っ盛り、エアコンで部屋を冷やしているとはいえ、汗が滝のように流れる。

「どうですか? 森岡。 ワタシの手料理も捨てたものじゃないでしょう」

「は、はい、とても美味しいです」

「良かったです。 初めて料理を作りましたが、喜んでくれて嬉しいです」

「ミカン先輩って、やっぱり、うどんが好きなんですね」

「別に好きなわけではありません。 ワタシが作れそうだから、うどんにしただけです」

なぜか美栞は自分がうどん好きだという事を否定する。

(素直じゃないな……)

「さて、夜も更けてきたことだし、そろそろ、ワタシの覚悟を受け取ってください」

やはり、本気で美栞は僕との関係を進めるみたいだ。

(どうしよう?)

美栞は平気なのだろうか? 彼女が僕の事を好きだとは思えないし、僕も、彼女のことは好きではあるが、恋してはいない。

男だから、ヤレと言われればできるし、陽菜みたいに子供じゃないから、何ら障害はないだろう。

でも……、

「あ、あの、ミカン先輩、本当に良いのですか? 僕が初めての相手で」

「森岡は、嫌なのですか? ワタシのオッパイを触りたいのでしょ?」

「そ……、それは、まあ……、そうですけど」

美栞の爆乳は、男なら放っておけないくらい、魅力的だ。しかし、綾乃との事を思い出すと、女性にとって処女喪失はかなりショッキングな出来事なはずだ。

「あの……、ミカン先輩は、僕との関係を『実験』だと言いました」

「はい、そうです。 森岡はモルモットです」

「でも、この先は、その……、するという事は、実験と呼ぶには、取り返しがつかない、というか」

僕は、何を言っているのだろう?

「要するに、森岡は、ワタシのことが『好きじゃない』と言いたいのですか?」

美栞は、僕の心を見透かしているようだった。僕の躊躇いの本質まで分かっているかのように。

「いえ、好きですけど、その、言いにくいのですが、恋してないというか……」

「じゃあ、お相子です。 ワタシも森岡に恋してません」

僕が何か言おうとするのを遮り、美栞は続ける。

「ワタシが経験したいから、ではダメですか?」

僕ももう、覚悟を決める。

「先ずは、『キス』というのを、してください」




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