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不倫研究サークル

第13章 それぞれの道

もともと、小梢は僕を探すために東京の大学に進学したのだ。
そして、そ彼女の目的は達成できたのだから、東京に居る意味がなくなったのだろう。

でも……、これで、完全に小梢との接点は無くなってしまった。

最後に彼女を見かけたのはいつだったろう?

遠くから盗み見するだけでも、僕は彼女が元気でいるのだと安堵したのだが、それさえもできなくなるのかと思うと、途端に寂しさがこみ上げてきた。


「圭、大丈夫?」

「ん、ああ……」

「小梢さんってさ、何処か影があったじゃない?」

「そう言われてみれば、そうだな……」
 
僕は、小梢が時折見せる寂しげな目を思い出した。そして、その原因を知っているからこそ、胸が苦しくなる。


「でも、先月会った時、なんとなく晴れ晴れとした感じだったよ」
「『東京でやりたかった事は出来たし、自分の目標もできたから』ってさ、何かを見つけたんだろうね」


小梢も、美栞も、自分の目標を見つけ、僕から去っていった。

僕は一人取り残された気がした……。


「今日、泊まっていこうかな~」

「だ・め・だ!」


「ちぇッ」


(僕に……、何か『やりたいこと』は、見つかるのだろうか?)

僕の中に、微かな焦りが生じた。




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