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不倫研究サークル

第14章 愛莉

「愛莉、どうして僕が頑張ることが、愛莉の不幸せになるの?」

「圭の、負担になるから」

「負担だなんて、大切な人のために頑張るなんて当たり前の事だよ」

「いや、冷静になって聞いて。 圭もわたしも、まだ学生なの」

いつになく愛莉の目が鋭かった。

「分かってるよ、そんな事」

「どうやって、わたし一人じゃない、子供もいて、 どうやって生活するの?」


「僕は今、家庭教師のバイトに、カテマッチの運営も手伝っていて、新卒サラリーマンくらいは稼いでる。 二人家族が増えても大丈夫だよ」

愛莉は下を向き、何かを考えているようだった。


「家族って……。 ゴメン、やっぱり怖い」

「今は、圭は気持ちが昂っているだけだと思う。 母さんも、これまで何度か男の人から交際を申し込まれたこともあったけど、結局、誰とも付き合わなかった」

愛莉が顔をあげ、僕を見つめる。

「何故だかわかる?」

僕には、愛美母娘がこれまでどんな人生を歩んできたのかは分からない。黙って首を横に振る。

「わたしが、いつか邪魔者になる事を恐れたからなの」

男は、子供を好きになる訳ではない。女性を好きになって、たまたま好きになった女性に子供がいた、要するに子供はオマケというわけだ。

愛美に交際を申し込んできた男も、結局は愛美が必要なだけで、愛莉は、悪い言い方をすれば邪魔者という事になる。

愛美は、そんな男たちの本心を見透かしていたのだろう、そして、愛莉もその考え方を受け継いでいるのだと、愛莉は話してくれた。


「僕は、生まれてくる子を邪魔者だとは思ってないよ」

「うん、圭なら、そう言うと思ってたし、きっと、そうなんだと思う」

「だったら……」

「だから、なおさら怖い」

「圭は、きっと頑張りすぎるから、いつか頑張りすぎて、わたしや子供のことが負担になって、もし……」

愛莉は言葉を詰まらせ、不安な表情を見せた。


「もし……後悔でもされたら……、わたしは、きっと、死ぬほど辛いと思う」



未来のことは、誰にも分からない。今、僕は愛莉のためにできることは何でもすると思っていても、将来、自分の選択を後悔する時が来るかもしれない。


でも……、


僕は、ただ、愛莉と離れたくないだけなのに、どうして上手く彼女を説得できないのだろう?


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