不倫研究サークル
第15章 帰省
「ご、ごめんなさいね。 さ、入ってちょうだい」
華子の母は、我を取り戻すと僕を家の中へ招き入れてくれた。
「突然お邪魔して、すみませんでした」
和室に通され、僕は東京で買ってきたお土産を渡す。
「あら、気を使ってくれてありがとう、ちょっと待ってて、今、お茶を入れるから」
そう言うと、華子の母は台所の方へと立った。
和室には仏壇があり、遺影も飾られていた。中学生の女の子と中年の男性の写真だ。
「すみません、お線香を上げさせていただいてもよろしいでしょうか?」
麦茶と、お菓子を盆にのせて戻ってきた華子の母に一言断って、僕は仏壇にお焼香をあげた。
「森岡君は、一年生の時の華子しか知らないのよね?」
「はい、僕は一年で転校しましたから」
遺影の華子は、僕の記憶の中の彼女より随分と痩せていた。
「どう? 可愛くなってるでしょ?」
「え……ええ……」この場合、なんと返事して良いか困ってしまう。
「あの子、『可愛くなって森岡君にビックリしてもらうんだ』ってダイエットして……」
ここで、華子の母は言葉を詰まらせる。
「自殺する、一週間くらい前だったかしら、『10キロも瘦せたの、リバウンドするかもしれないから写真撮って』って……」
僕も、思わず胸が痛くなる。
「まさか、その写真を遺影に使う事になるなんて……」
どれ程の苦痛だったのだろう?
もう、僕には想像の域を超えていると思えた。 きっと華子の母にとっても、あの事件は永遠に終わらないのだろう。
「隣の写真、主人なの。 一昨年、無くなってね……、今は、私ひとり」
「あの……、今日、伺ったのは、これをお返ししようかと思って」
僕は、小梢から預かっていた華子の日記をバッグから取り出した。
「雪村さん……、森岡君を見つけてくれたのね……」
華子の母は、我を取り戻すと僕を家の中へ招き入れてくれた。
「突然お邪魔して、すみませんでした」
和室に通され、僕は東京で買ってきたお土産を渡す。
「あら、気を使ってくれてありがとう、ちょっと待ってて、今、お茶を入れるから」
そう言うと、華子の母は台所の方へと立った。
和室には仏壇があり、遺影も飾られていた。中学生の女の子と中年の男性の写真だ。
「すみません、お線香を上げさせていただいてもよろしいでしょうか?」
麦茶と、お菓子を盆にのせて戻ってきた華子の母に一言断って、僕は仏壇にお焼香をあげた。
「森岡君は、一年生の時の華子しか知らないのよね?」
「はい、僕は一年で転校しましたから」
遺影の華子は、僕の記憶の中の彼女より随分と痩せていた。
「どう? 可愛くなってるでしょ?」
「え……ええ……」この場合、なんと返事して良いか困ってしまう。
「あの子、『可愛くなって森岡君にビックリしてもらうんだ』ってダイエットして……」
ここで、華子の母は言葉を詰まらせる。
「自殺する、一週間くらい前だったかしら、『10キロも瘦せたの、リバウンドするかもしれないから写真撮って』って……」
僕も、思わず胸が痛くなる。
「まさか、その写真を遺影に使う事になるなんて……」
どれ程の苦痛だったのだろう?
もう、僕には想像の域を超えていると思えた。 きっと華子の母にとっても、あの事件は永遠に終わらないのだろう。
「隣の写真、主人なの。 一昨年、無くなってね……、今は、私ひとり」
「あの……、今日、伺ったのは、これをお返ししようかと思って」
僕は、小梢から預かっていた華子の日記をバッグから取り出した。
「雪村さん……、森岡君を見つけてくれたのね……」