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不倫研究サークル

第16章 卒業

陽菜には振り回さっれてばかりだったが、最後の最後まで翻弄されようとは思っていなかった僕は、ただ茫然とするばかりだった。

「まあ、僕が文句をいえた立場じゃないけど、そりゃないよ~」

「だったら、東京で就職すればよかったんじゃない。 そしたらワタシという二百人切りの美少女と付き合えたのに」

自分で「美少女」と言ったり、「二百人切り」の間違った用法といい、相変わらず陽菜は面白い。


「でも、どうしても最初の赴任先は故郷の中学校にしたかったんだ」

「それって、小梢さんと別れたことと関係してるの?」

「うん、でも小梢が故郷に帰ったから僕も帰るというわけではないんだ」


僕は初めて陽菜に、土門華子の事、それに小梢がどう関わっていたのかを話した。


「小梢さん……、可哀そう……、それに、その華子さんも。
ワタシも華子さんの日記を読みたかったな~」

「だから、どうしても松江の中学校、僕が一年生を過ごした学校で教師としてスタートしたかったんだ」

「そういう事なら、仕方ないか。 ワタシはてっきり小梢さん目当てかと思ったよ 笑」

「小梢とは、別れてからは全然連絡を取ってないし、とっくに関係は終わってるよ。 彼女も新しい目標とやらを見つけたんだし、今頃、目標は叶ってるだろう」

僕の話に、陽菜はニヤニヤしながら聞き入っていた。なにか嬉しそうですらある。

「なんで、そんなに嬉しそうなんだ?」

「別にぃ~」と言いながら、笑いがこみ上げてくるのを堪えているかのようだ。

「そういや、小梢さんの目標って、教えてなかったね。 知りたい?」

少し気になったが、僕にとっては、もう過去の事だ。教師になると決めて、小梢の事はなるべく考えないようにしていた。

「いや、良いよ……、今更だし」




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