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不倫研究サークル

第6章 一触即発

思いもよらない来訪者に、小梢の表情が曇る。

「こちらにお名前を記入してください」小梢は訪問者用のリストを差し出した。

陽菜はリストを受け取ると名前を記入しながら、聞えよがしに僕に声をかけた。

「ねえ、圭。ここは何を書けば良いの?」

「あ、それは……」小梢が説明しようとするのを、陽菜が遮る。

「アナタに聞いてない」


(うおおーー、なぜ好戦的なんだ、この子は)


「クスっ、お嬢ちゃん、わたしのことが嫌いなのかしら」

小梢も負けていない。先日のデートの時もそうだが、僕の抱く小梢像と違った一面を見せてくれた。


「子供扱いしないでよ、気分悪い」

「圭君、これは、どういう状況なの?」

小梢は、陽菜を相手にせずに僕を見据える、が、別に怒っている風ではない。

「あ、この子は僕の教え子なんだよ。大学受験はまだ先だけど、大学がどんなものか良い機会だから見学させようと思って」

ふ~~ん、と言った表情の小梢。

「お似合いじゃない」

(?)

小梢の意図するところは、次の発言で明らかになる。

「やさしいお兄ちゃんと、生意気な妹みたいで 笑」


僕は意外だった。小梢がこんなにも好戦的な一面を持ち合わせていたことに。

だが、好戦的という点において陽菜が負けるわけがない。

「クスっ、余裕ぶって、何も知らないで 笑」


ここで僕は、自分がいかに不味い状況にいるのか気づく。もし、陽菜がキスの事を喋れば、小梢との”嘘の恋人関係”さえも破綻しかねない。


わきの下に汗がにじんだ。




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