悪魔から愛されて
第20章 ライバル
私は午前中の仕事を終わらせるために急いでいた。
マネージャーのところに、秘書課の男性、渡辺さんがやって来た。
「マネージャー、お忙しいところ申し訳ないのですが…
午後に大事な来客があり、営業部から応援をお願いしたいのです…」
マネージャーは笑みを浮かべながら応えた。
「渡辺さん、それでしたら私が伺いますよ…」
「できれば…女性の方にお願いしたいので、鈴木さんにお願いできないでしょうか?」
マネージャーは少し困り顔になり…
「鈴木さんは、まだ転勤してきたばかりで、解らないことも多いので、西条さんやほかの女性ではだめでしょうか?」
渡辺さんはその言葉を遮るように話し始めた。
「…上からの希望もありまして…鈴木さんに来ていただきたいです。」
そう言うと、渡辺さんは私のほうを向き、ニコッと微笑んだ…
マネージャーは、仕方なく私を行かせる返事をすると…
優しいマネージャーは私が可哀そうだと思ってくれているようだった。
「鈴木さん、…本当に申し訳ないけど、来客の手伝いに行ってくれるかね…上からの希望ということで仕方ないんだ…」
「はい…。心配しないでください。不安ですが、行ってきます。」
何故かわからないが、不安な気持ちは本音だった…
私は渡辺さんに案内されて、最上階のVIP用応接室へ向かった。
会社でも役員や、大切な来客時のみ使われる応接室は、私も入るのが初めてだった。
カードキーを使い、電子ロックの重厚な扉を開けると、豪華な応接セットや高そうな壺に圧倒される…
「渡辺さん、本日のお客様はどのような方なのですか?」
「僕もよく知らないのです。鈴木さんをこのお部屋にお連れするのが仕事なので…」
「…えっ…」
その言葉を残して、渡辺さんは素早く部屋を出た。