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健斗はだいぶ元気になり、会社へも出社していた。

マネージャーが慌てた様子で、健斗に近づいて来た。

「高山君、大変だよ…大切なお取引のお客様が、君をご指名なんだ。すぐに来てくれ…」
「…はい。マネージャーどちらのお客様ですか？」
「あぁ…三枝物産の社長が直接お越しだよ…」



…三枝…物産…


私は、先日の女性を思い出していた。

そう…確か…三枝っていう名前だった。


…まさか…



１時間程して、健斗とマネージャーが応接室から戻って来た…

「高山君、数億円のお取引だ…でも…条件がなぁ…困ったなぁ…」
「マネージャー、私がもう一度話をしてみます。解ってもらえるように…」
「…あの感じじゃ…難しいぞ…かなり…」

「…くそっ…なんなんだよ…」


健斗が仕事であんなにも怒りを表に出したことは…今までない…


健斗…大丈夫かな…




その夜…

「恵美、ただいま…」
「お帰り…健斗」


健斗はいつもより無口だ…


すると…健斗に後ろから抱きしめられた…
「健斗…どうしたの？なにかあったの…」


健斗の声が暗い…
聞くのが怖かった…


「今日、三枝物産の社長が来たのは知ってるよね？」
「…うん。」
「病院に花束持ってきた女性の親父なんだ…」
「そ…そうなんだ…」
「うちの会社と数億円の取引を持って来たんだけど…条件がある…」
「…えっ…」


「もう一度、娘との結婚を考えて欲しいと言い出して…とりあえず３日間の旅行に娘と行くこと…それが条件だ。」


「…それで…健斗は…ど…どうするの…」



私は怖かった…健斗が何を言うのか…



「会社からの命令で…３日間の旅行には行けと…言われた…」


「…健斗…」


「恵美…ごめん…３日間だけ…許してくれ…どうすることも出来ないんだ…」


「…うん。いいよ。な…なに深刻な顔して…健斗を信じてるよ…」


「恵美…ごめん…彼女とは何もないから…旅行行っても…何もないから…」





健斗を信じている…


でも心臓に…何かが刺さっているようだ…


心臓が…痛い…