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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第7章 隠しきれないもの

叶わぬまま、父はその5年後に、病気で死んだ。
最期の最期まで、母のお腹にいた子どもが心残りだった父は、死に際に言った。

「優……。お前の母親のお腹の中にいた子は、今のところ生きている。この先、巡り会うことがあったら……、優、サキのことを頼む。お前の妹だ」

『サキ』と言っていた。
父から、名前を聞いたのは、その1度だけ。
母親の旧姓は『白河』。

『白河咲』

俺と咲は、母親を同一にする、兄妹だった。

咲と学校の健康診断で会ったとき、父が言っていた「酷い将来」に、すでに身を置いていた。
咲のその姿を見て、亡くなった父を想った。
何としても、守らなければ。と。

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