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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第7章 隠しきれないもの

咲が入院してから、咲の母親が病院に乗り込んできた。それは紛れもなく俺の母親だった。

「優! 久しぶり、医者になったんだね! お金貸してよ」

……母親はクズのままだった。
重症を負う咲の心配をすることなく、俺に向かってそう言ったのだ。

殴ってやりたくなって、拳をぎゅっと握った。

「帰れよ。それが、娘が死ぬかもしれない親の言うセリフかよ……」

怒りで声を絞り出すのが精一杯だった。
そんな俺の気持ちなんか踏みにじるかのように、母親は言った。

「あの子、死ぬの? 死んでもいいよ」

軽く、どうでもいいと言うように。
1つの命を蹴散らした。

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