優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第2章 担任、井田春斗のクラス
「さて、白河さん。本題の、生活記録ノート、見せてくれるかな?」
お互いおにぎりを食べ終わった後で、井田先生は言った。
わたしはその瞬間に、見せていた笑顔を引っ込めて、表情が上手くつくれなくなる。
ゆっくりと、井田先生にノートを差し出す。
井田先生はそっとそれを受け取って、1ページ目を開いた。
昨日の夕食、カップラーメン。就寝時間、23時。
起床時間、7時。朝食、なし。
「……朝ごはんなしで、昼も抜こうとしてた?」
「ひ、昼は……忘れてきただけだから。朝はいつも食べないです」
「朝食、少しでも食べるの、無理そう?」
井田先生にそう訊かれて、わたしは小さく頷いた。
朝、家を出る前の母と母の恋人のことを考える。
あの2人は、朝はたいてい寝ている。物音などで起こそうもんなら、今日みたいにみぞおちを蹴られることもある。朝食なんて、悠長なこと言っていられない。1秒でも早く、家を出るのが先決だ。
お互いおにぎりを食べ終わった後で、井田先生は言った。
わたしはその瞬間に、見せていた笑顔を引っ込めて、表情が上手くつくれなくなる。
ゆっくりと、井田先生にノートを差し出す。
井田先生はそっとそれを受け取って、1ページ目を開いた。
昨日の夕食、カップラーメン。就寝時間、23時。
起床時間、7時。朝食、なし。
「……朝ごはんなしで、昼も抜こうとしてた?」
「ひ、昼は……忘れてきただけだから。朝はいつも食べないです」
「朝食、少しでも食べるの、無理そう?」
井田先生にそう訊かれて、わたしは小さく頷いた。
朝、家を出る前の母と母の恋人のことを考える。
あの2人は、朝はたいてい寝ている。物音などで起こそうもんなら、今日みたいにみぞおちを蹴られることもある。朝食なんて、悠長なこと言っていられない。1秒でも早く、家を出るのが先決だ。