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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第2章 担任、井田春斗のクラス

「そっか……じゃあお昼はちゃんと食べなきゃかな。またご飯忘れたら、保健室においでね。次はイチゴも食べられると思って」

井田先生はふわっと笑う。イチゴは魅力的だけれど、そんなに先生にお世話になるのは少し気が引けた。

「あとね、白河さん。変なこと聞いてくると思うかもしれないけれど」

ノートを見ながらそう話す井田先生は、完璧に医師だった。なんとなく全部見透かされそうな感じがしてドキドキしてしまう。その前置きにも背筋が伸びた。

「月経は来てる? 生理のことなんだけれど」

見た目医師の前に、担任の男性教師だ。
そこは正直に答えるのがためらわれる。
モジモジしていると、井田先生が先に口を開いた。

「何も恥ずかしいことではないよ。……まぁ、そうだよね、僕は男だし。でもそのうち、他の女子生徒にも、このノートに月経周期の記し方も教えるつもりでいる。生理だって体の変化、知っておけば、みんながつらい時につらいって声を上げやすくなる」

井田先生は、単純にわたしの体を心配していることがわかった。なんとなく、先生が『体を大切にすること』をクラスの約束にする理由がわかる気がした。
わたしは小さく息を吸って、口を開いた。

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