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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第2章 担任、井田春斗のクラス

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ひとりになった保健室で、頭を抱えていた。
去年の担任から受け継いだ資料に目を通す。

白河咲。
成績優秀。ここ、桜堂大学附属中等教育学校では、中学受験を実施しており、入学者の中でトップの成績の者は学費は免除になる。彼女はそれを利用して、入学している。
2年生に進級時にも、成績は学年上位。
おそらくこのままいけば、高等部に進学する際もトップのままで、学費の免除が望まれる。

幼い頃に両親が離婚、母親に育てられている。
去年の三者面談時、母親の意向は「本人のやりたいようにやってほしい」とのこと。

一見すると、上手くいっている家庭のようだが、昨日今日の生活記録、昼食を抜こうとしていたこと、俺に触れられた時の怖がり方を見ると、虐待の可能性が浮上している。
確信するのにはまだ不十分だが、なんとなく嫌な予感がする。
そしてその予感はだいたい合っている。

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