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天空のアルカディア

第4章 誓い

「アルカディアを造るって…」


ターナはそれから絶句する


アルカディアが保てたのは人々に争いの概念がなかったから


今となっては無理な話だろう


国同士、人同士ですら諍いが絶えないこの世界では


今は戦争こそないがそれも三国の国力が疲弊した為の一時的なもの


何時また戦争が起こってもおかしく程国力は回復している


「光は他の属性の長、その者を王として争いのない理想郷を造る…それが俺の使命だ」


しん、とした空気が流れライが再び言葉を続ける


「マリア、貴女が王となり世界を統一すると誓うなら…」


片膝をつき、ひざまずいて


「風魔 雷、この命尽きるまで貴女をお守り致します」





マリアはひざまずいたライを見ながら震える


「私に二国を潰し、統一国の王になれ、と?」


「はい」


「貴方のいう理想郷の為、多くの命を奪えと?」


「…はい」


マリアの言葉には怒気、ライの返事には悲壮が感じられるがターナは口を挟まなかった


いや、挟めなかった


マリアが人前で明らかな怒りを見せる所を彼女は知らなかったから


「平和の為に今の平穏を乱し、血を流せと貴方は言うのですか!!」


「…近々この平穏は崩れます」


「…っ!?」


両目を見開くマリア


「バルトが不穏な動きを見せている…また長い戦が始まるでしょう」


「…」


マリアもその事は聞いていた


国王が崩御し不安定な事態を打開する為、戴冠式の時期を早めたのだから


「流れる血を糧にして貴女が平和を築くか、敗北し他人に全てを投げ出すか…どちらかの道しかない」


「……私は…」


重い沈黙を破って口を開く


「私は…戦は嫌いです…大切な人や民が死んでしまうから…」


胸のペンダントを握りしめ、唇を噛む


「でも…私はお父様に誓いました『私は逃げずにこの国を守っていきます』と…だから」


そこで一呼吸おいて


「私と共に戦って頂けますか…風間 雷」








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