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NOMAD メガロボクス2

第2章 ビシッ

はじめの1ラウンドはノマド(メガロ2ではリングネームをそう名のってる)がチーフを追いこみチーフはディフェンスで手一杯でひとまずはおわった。



だが2ラウンドでのノマドは動きのパターンをチーフに読まれたらしく押されぎみだ。そして3ラウンドでチーフはノマドの右ストレートを顔に受けてヨロめいた。


だがそれはイベントの見せ場を作りさらに盛りあげるためのかませ犬(豪族の娯楽で闘犬があって勝たせる役の犬)が、チーフのメガロボクスに出場するための条件だった。



素人の目では見分けはつきにくい。ボクシングにくわしい者なら気づくが。



だがノマドもチーフが手強くあせるあまりに思わぬミスで軽くかすっただけのはずだった。だからチーフがヨロけるはずがないのだ。



(こんな軽いのでフラつくかよ、ナメんなよっ!)



とノマドの怒りがあとの猛ラストスパートにこもるのも無理はなかった。そして2ラウンドでの勢いを取り戻せないチーフが倒れると10カウントを過ぎても起きあがれず試合の結果はノマドの勝ちに終わった。


観客はギャンブルという娯楽をしたくて掛け金を払う。そのうえ自分の期待してるボクサーが勝てば自慢できるからプライドも満たされる。おまけに運がいいともうけが期待できる。損をする者もいるがそれはかまわないのかもしれない。



もうけた者は喜びの声。ともう一方では掛けた金が泡と消えたくやしさの両方を含んでるからこそ、興奮さめやらぬ歓声がわき上がる。だがジョーは納得いかなかった。年配の契約者に



「イカサマなんかまっぴらだ。オレは実力で勝ちたい」



と訴えるが細い目の持ち主は



(フン、なに言いやがる)



とでも言いたそうに顔を左斜め下に向け、睨みあげるようにノマドを見すえるとメガネを中指と人差し指で支えながら言う。



「もう少し世渡りの仕方を考えるんだな」



と言いすてて契約者は控え室を去った。それでも格闘する者の本音としてはイカサマなんか抜きで試合したいに決まってる。



いやボクサーなら誰もがギアレス(ギアなしで試合する)で戦いたいだろう。だが観客はそれでは月並みすぎて満足しない。



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