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NOMAD メガロボクス2

第7章 バキッ

やがてわいたお湯と一緒に茶葉をティーポットに入れて飲みごろな色になるまでチーフは椅子に腰かけた。



「…まるで妻や息子といた時みたいだ」



そうチーフの口から言葉が出た。彼の地声は低いほうだが発音は大きい。だからジョーにも聞こえた。



(………?…)



ベッドとキッチンの間にあるテーブルにハーブティーがおかれた。カップから温かい湯気がのぼるしハーブの香りもなんだか落ちつける。心なしかジョーの痛みがやわらいでくるような気もしてくる。



「……」



窓ぎわに飾ってあるフォトフレームのなかには20代ぐらいの女性と6才ぐらいの男の子が写った写真がジョーの目をとらえた。



「ああ…それか、妻と息子だ」



チーフと同じく浅黒い肌をしてる、妻は男の子を抱きかかえて母親ならではの母性的なうれしげな笑顔を満面にうかべてる。そんな様子だ。



「ふたりとも体が弱かった、だからお前のときもつい…」



(………)



ジョーは天涯孤独の子供のころに番外地ジムの南部贋作(がんさく)会長に拾われた。同居人の兄弟子も同じような経緯らしい。ふたりとも向いてたようで南部にボクシングを教えてもらってた。



めんどう見がいい南部はジョーと兄弟子と同時に身よりのない子どもたちも数人みんなでいっしょにジムの2階の住居スペースに同居させてくれてた。ただボクシングを教えるかはその子しだいだ。そんなことをふと思い出した。



「オレは…」



ジョーが言わずにはいられないらしく切り出した。



「………?」



チーフはジョーがなにやらわけありげなことをうすうす感づいてた。もっともわざわざ聞きはしないが。



「オレは親の顔を知らない…」


そのかわりに家族ともいえる会長や兄弟子に弟分や妹分がいたことを話す。



「……そうだったのか…」


チーフはそれ以上なにも言えずに黙ってジョーの話を聞いてる。



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