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メランコリック・ウォール

第51章 傷


「内容、聞いたの…?」

「ああ。…アキには見てほしくない。」

「…。」

「…。」


「でも、筆跡を見れば…もし、あの人だったら分かる。私は大丈夫だから…!」

「今は駄目だ。もう少し話してみるから、待っててほしい。」


電話を切り、言うとおりにおとなしくしていた。


しかし、夕方17時を過ぎても連絡が入らない。

飛行機の時間まであと2時間もないはずなのに…。


嫌な予感がつきまとう。

電話にも出ず、メールも返ってこない。


18時になり、義父に電話をかけたが出ない。

お父様は固定電話からウォールシイナへ電話をかけた。
だが、やはり誰も出ない…―――。


どうしよう、どうすれば……。


一緒に行かなかったことの後悔や、何も出来ないこの状況への焦りが押し寄せた。


19時になるまで、何度も何度も電話をかけ、メールを送った。

しーんと佇む携帯がもどかしい。



「飛行機は19時台です。やっぱりおかしい…どうしよう…」

「アキちゃん、落ち着いて。ね?」

マサエさんが背中をさすってくれるが、私の皮膚は硬直したままだった。



「警察に連絡するか」

お父様は落ち着いた口調で言った。


私とマサエさんが頷いてからほんの数秒後、私の携帯がけたたましく鳴り響いた。


「もっ…もしもし!!?」


焦りから、相手も見ずに出てしまった。


相手は、まさに今電話しようとした場所からだった。



…―――――



あれから、私はすぐに飛行機のチケットを取った。


幸いにも空きがあり、夜の便に間に合った。


やっと警察署に到着すると、時刻はもう23時。


担当の警察官から話を聞きながら、私はその時の状況を思い浮かべていた。


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