
🏠️家庭内恋愛💕
第8章 女王蜂
「それにしても――――大胆に口説くのね?」
忍はグラスに着いた口紅を指で拭うと、横目で和津八を見つめる。
「まぁね…君の噂は――――嫌でも聞こえてくるからね」
和津八は小さなガラス皿に盛られたナッツを一つ摘まむと、口に放り込む。
「噂――――…残念な噂ばかりでしょう?」
忍は気だるげに頬杖をつくと、体のラインを強調するかのように腰をひねり…頬笑む。
金に物を言わせ――――作り上げた身体は…男達を魅了する。
父親が会社を複数経営している――――と、言うだけでもセレブの仲間入りだと言うのに…忍の親戚には政界に顔の聞くものまでいる…。
セレブ中のセレブ――――と、言ってもいい…。
彼女自身も父親の会社の重役で、“ビューティーアドバイザー”などと言う肩書きを与えられてはいるが、アドバイザーらしいことは一度もしたことない。
出社はしない、会議も出ない、企画も出さない――――だが、重役扱いである。
