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零の大臣

第1章 零の帰還

「二人に何をした……」
伊達自身も正直驚いていた、片桐と田城の名前を出され予想以上に動揺している事に。

「何もしていないよ……今はまだ……ただこれからの誠君の返答次第では二人に不幸がふりかかるかもしれないね。」

「……………」

「少し意外だね」
緋山は動揺した伊達を見てそう言った。そしてそれは言葉には出さないが片倉も同じ事を思っていた。

「3年前の誠君を知っている私としては君はこの程度では動じないと思っていた」
3年前の伊達誠であれば確かに動揺などしなかっただろうそれだけ冷徹で非情で残忍な男、それが3年前の伊達誠だった。しかし今伊達はかつて無い程に動揺していた、そのことには伊達自身が一番驚いていた。ただの友人いやだれが人質に取られようとも感情など微塵も見せずに人質を見捨ててその場を収める。
3年前からそれは変わらないと思っていたがどうやら片桐と田城、二人と過ごした3年間はそんな伊達の考え方を変えてしまうほどかけがえのないものだったようだ。

「まったく、俺が一番驚いてるよ………確認するが、俺があんたに従えば二人には何もしないんだな?」

「もちろんだ、それは約束しよう。」

「………いいだろう、あんたの望み通り大臣に戻ってやろう。」

「ありがとう誠君。そう言ってくれると信じていたよ。」

「俺を連れ戻したことを後悔させてやる、覚悟しとけよ」

「後悔か……させられるものならぜひさせてほしいね」
こうして伊達は大臣に戻る事となった。伊達は心の中で"悪いな彩陽、明日はもう会えそうにないな"そう呟くのだった。

翌日 雪見ヶ原高等学校
雪見ヶ原高等学校ではホームルームの時間まで残り1分を切っていたが今だ伊達が登校していないことに片桐と田城が不思議がっていた。

「どうしたんだ誠の奴?風邪か?」

「………………」
片桐は昨日伊達と別れるさいによぎった嫌な予感が再び脳裏をよぎる。するとホームルームの時間になり担任の教師が教室にやってきた。そして担任の言葉により片桐の予感は的中する。

「まずは皆さんにとても残念なお話があります。伊達誠君ですがこの度一身上の都合により本校を退学することとなりました……」
担任のその言葉を聞いた片桐は頭の中が真っ白になった…………

        第一章 完

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