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零の大臣

第1章 零の帰還

「何?」

「それだけじゃない、君の通っていた雪見ヶ原高等学校も既に退学手続きは終わっている。」

「………」
荒唐無稽な話だがこの男ならありえると伊達は思った。しかしもちろんブラフの可能性もある、しかし今それを確かめる方法が無い。まずはそんな話までしてこの男が何をしたいのかを確認する必要がある。

「で、そんな事をしてあんたは一体何がしたいんだ?」
まずは冷静になり相手の目的を把握する。ここで感情的になれば緋山の思う壺になってしまう、それは避けなければいけない。
しかし伊達は既に緋山の目的におおよその見当はついていた。そして緋山の目的が予想通りのものであれば最悪部屋を失い学校を退学になろうとも問題ない。

「ふむ、誠君には本日から大臣に復帰してもらいたい。」
伊達の予想通りの台詞が緋山から発せられる。伊達はこの展開は想定済みのため予め用意していた返事を返す。

「断る。」

「まぁ、恐らくそう言うとは思っていたよ。だが君の帰るべき場所も居場所もどちらももう無くなった、ここで私の話しを断って君は一体何処へ行くのかな?」

「さぁ?まだ何も決めていないがただ、あんたの元にいるよりかはマシなのは確かだな。」

「なるほど、私の元にいるくらいなら学校も自宅も不要ということか。」

「ああ、残念だったな見込みが外れて」

「私も随分と嫌われたものだな」

「……じゃあそろそろ帰らせてもらう」
伊達そう言って再びドアノブに手を掛ける

「『片桐 彩陽』、『田城 敦』」
緋山から突然自分の友人の名前を言われ伊達の体の動きが止まる。

「もちろん知っているよね、誠君」

「…………」

「ふっ、ようやく動揺してくれたね誠君」

「そう、君の大切なお友達だ。高校卒業まで後少しだ、出来れば何事もなく無事に卒業出来ると良いんだがね?」

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