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仔犬のすてっぷ

第23章 仔犬達のワルツ1 カリームVS切り裂き魔


ちんっ!キンッ!カチチイィン!


「・・・・・・・・・あ、あれ?」

 避ける事を計算され、投げつけられたダーツ(痺れ薬付)は、全く避ける気の無いカリームの二本の寝龍刀にガードされ、呆気なく地面に転がり落ちる。


「この剣の広い幅と、こんな形をしている理由は、こういう使い方が出来るように考えられて作られているからです」

「……なら、コレはどうよ?」

 カリームを翻弄しようとジグザグに不規則な走り方をしながら一気に距離を詰めたヤスが、4本ずつ、計8本を左右の手に挟み、交互に投げる。


「・・・無駄な事を……」

 二本の寝龍刀を器用に動かし、盾のように扱って全部のダーツを払い落とすカリームへ、さらに一気に間合いを詰めたヤスは背中から格闘用戦闘ナイフを二本取り出し


「切り刻んでやるって言ったじゃねえかあっ!」

逆手に持ったそれを矢継ぎ早に斬りつける。
カリームは慌てることなく、手首を動かし刀身の向きを変えたり剣の重ね方を変えるだけで難無くそれを弾いていく。


「チキショー!何でだ?!何で刃が届かな……あ……!」

ヤスは、ナイフでカリームに斬りつけているはずだったのに、いつの間にか現れた一匹の白銀の龍に斬りつけ、その体に弾かれているような錯覚に囚われた。


「なんだ…なんだ、コレ?!……そんな事が……」

「・・・見えましたか?貴方にも。
……それでは眠る龍を起こしてしまった貴方に、龍の煌きをお見せしましょう……」


「んなもん、見たかぁないわ!……もっと、回転を上げて・・・」

 ナイフを突き付けるスピードを上げようとしたヤスの眼前で防御を解いた剣の動きが、まるで白銀の龍が大きな口を開けて音の無い咆哮を上げた・・・ように彼の眼には映った。



「マフィリィブ………」

 両手の剣を叩き合わせ火花を散らし、そこから大きく上へ大剣二本を振りかぶる。
カリームの体は大きく反り返り、剣の姿はカリームの背中に隠れて見えなくなる。



「……アリュシィヌィ・アルディフュイ!(白銀龍の爪!)」



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