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仔犬のすてっぷ

第26章 仔犬達のワルツ4 森川 VS 霧夜


「……随分余裕じゃねえか・・・俺と戦ってる最中に他事するなんて…なっ!」

 ヒュッ!と甲高い風切り音で繰り出される龍節棍の薙ぎ払いを、数センチ体をずらしただけで避ける霧夜に、森川は苦笑いして文句を言った。


「・・・そうでもないですよ?貴方の攻撃はナカナカのものです。随分鍛錬されてるようで、素晴らしい」

 薙ぎ払いからまるで生きているかのような動きでぐにゃりと曲がり、追尾するかのように斜め上から叩きつけられる龍節棍を、刃渡り30センチ程のナイフで往なしながらもう片方の手で投げナイフを森川へ投げつける。

 森川はそれを叩きつけていない側を棒にして、縦回転でヒュルンと回し、弾き落とすとそのまま棒を多節棍に変化させ、霧夜に叩きつける。
 傍から見れば、森川は黒くて長い蛇を巧みに操り霧夜を攻撃しているかのように見えた。


「三節棍でも、ちゃんとした武器として扱えるようになるにはかなりな鍛錬が必要だと聞いてますよ?ましてやコレは、かなり使うのは難しい武器のはず……それをここまで扱えるんですから。
悪い事は言いません。雑技団に入団して見世物として披露されてみては?」

「……龍節棍の攻撃をナイフ一本で捌いた奴はアンタが始めてで、正直驚いちゃあいるがね……それは余計なお世話ってもんだ、ぜっ!」

 話しながら一本の棒へ変化させた龍節棍を腰元で構え直し、ヒュルルルッと腰を中心に回転させながら一気に踏み込んで霧夜へ肉迫した森川は、龍節棍を三節棍へ変化させて左右に上下に、休み無く打撃を繰り出した。

 何発かは霧夜の肘や脛に当たるものの、強い打撃になるものはしっかり避けられ、再び投げナイフの投げやすい間合いを取られそうになる。


「……オマエ…肘や脛に何か仕込んでるだろ?当たった感触で判るぜ?」

 離れた間合いを取られる前に一歩深く踏み込んだ森川は、三節棍を一本の棒に変化させ、棒の突きを雨あられと繰り出しながら霧夜に問う。


「……ぐっ?!さ、流石にリーチの差が厳しくなって来ましたか・・・」

 流石に連続で繰り出される突きを避けきれず、体にも何発か喰らった霧夜は胸元を押さえながら呟き、よろける。



「・・・ならば、次は私の番、ですね……」


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