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仔犬のすてっぷ

第26章 仔犬達のワルツ4 森川 VS 霧夜


 前方にいた二人の霧夜を龍節棍が貫き掻き消したが、同時に残り7人の霧夜が、一斉に森川にむけて投げナイフを放つ。


「……くっ…!」

 辛うじて7本の投げナイフをなんとか避けたものの、Gパンの右の太腿が裂けて少し血が滲み出していた。


「素晴らしいですねぇ・・・今のを避けるとは。しかし、いつまで続きますかねえ?くくくっ…」

(……確かにこのままでは分が悪いな……)

 龍節棍を棒に変化させ、相手を見ないまま薙ぎ払う。棒は笑っている霧夜一人を掻き消したが、いつの間にか復活し、8人になった霧夜が再び投げナイフを構えだす。



「…仕方無い。龍節棍奥義………」

 棒状の龍節棍の片端を掴むと、森川は身体を一回転させながら大きく龍節棍を横薙ぎに振り抜いた。



「・・・黒龍、影閃撃、薙払い!」


 太さを増した黒くて長い帯が、まるで地を這う龍のようにグネグネと動き、這いずりながら瞬く間に8人の霧夜達を襲う。
 ナイフを投げるモーションに入っていた彼等は一人残さず黒い龍に掻き消されて消えた。

…と同時に


ーー ぱんっ!


 誰も居ないはずの場所から手を叩いたような音が響き……


ーーー ドスッ・・・

森川の左太腿にナイフが一本突き刺さった。



「……!?な、なんだと?!」

「残念でした。お話した通り、筋弛緩剤が塗ってあるナイフが刺さりましたよ?コレで貴方の負けは確定ですねえ〜…ハハハハハ〜!」









「・・・・・なあ?オッサン。あれ、どうなってるんだ?」

アチラの戦いを見ていた蒼空が、首を傾げている。


「なんか、モリリンの動きが急に悪くなった。何かされたんじゃないか?」

「……何か…か。
あらぬ方を見ながら話したり、誰もいない場所を攻撃したり……ありゃあ、霧夜の幻術だ」

「……げ、げんじゅつう?!そんな嘘くせえもん、実在するのかよ?!」


「そうか…そりゃ、そういう反応になるか」


やれやれ…という感じで小さくため息をついたトーマスが話し始める。


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