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仔犬のすてっぷ

第26章 仔犬達のワルツ4 森川 VS 霧夜


「…蒼空っ!モリリ……ぶひゃあおおっ!??」

 工場の出入り口から、戦いを終えて駆けつけたアキラが顔を出し、中の様子を見るより早く大声で呼びかける。

・・・それは、実にベストなタイミングであった。まさに奇跡と呼んでもいいほど、素晴らしいものだった。

 蒼空が力一杯ぶん投げたリンゴは、某国で大活躍したあの選手並みのレーザービームのようなスピードのライナーでまっすぐ森川へ飛んで行き、突如屈んだ彼の頭上をかするように通り過ぎて、ひょっこり顔を出したアキラの顔面に見事にクリーンヒットしたのだ。


「…あ゛、…れ?!」

 当然、森川が屈む事までは計算していなかった蒼空は、リンゴの行方の結末を見て顔面からさ〜っ…と血の気が引いていく。

「や…やあべえっ!」
「……おお〜…!今のはなかなか見事な送球だったな・・・ありゃあ痛えぞ?」

そう言いながらトーマスは「ほれ☆」と追加のリンゴを蒼空に手渡しながら感嘆の声を上げる。


「・・・・・そ……蒼空・・・か?
……お前って野郎…は・・・」

倒れそうになるのをなんとか踏み止まったアキラだが、そのまま一度顔を天井に向けたまま、両肩から かくんっ…と力が抜け落ちた。


ーー ガシャンっ★

 アキラの左腕のガントレットに付属しているシールドが一段階下へ下がり、ガントレットとシールドの間から何かのグリップらしきものが飛び出してきた。


「わっ…悪い!わざとじゃ無いんだ!お前を狙って投げたんじゃ無いんだ!だから、落ち着い・・・・・聞こえてねえな?こりゃあ!」

「・・・モンドウ…ムヨウ・・・ダ・・・」

 途中に積んであった段ボールや木箱、プラケースを弾き飛ばし、アキラが真っ直ぐ一目散に蒼空へ向かって突進する。
 その途中、森川に追撃のナイフを突き立てようとしていた霧夜が大慌てでジャンプして避けた下を猛スピードで走り抜け、攻撃を受け屈んでいた森川まで弾き飛ばして、蒼空の目の前まで肉迫したアキラは左のガントレットから電磁警棒を引き抜き蒼空に殴りかかる。


「・・・シネ!…ソラ……」

「ひっ…ひょえぇわああぁ?!」



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