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仔犬のすてっぷ

第26章 仔犬達のワルツ4 森川 VS 霧夜


ーー ズガシャアあぁん!!

チタン合金製の金属の塊が、安物の事務用デスクを真っ二つに叩き割った。


「なっ?!なんじゃあ?!」
「オッサン、逃げろ!」

 目の前でいきなり机を壊されたトーマスは、ひらりと椅子を踏み台にして高くジャンプしてアキラの打撃を避ける。
 蒼空はさっき一度頭から突っ込んだ段ボールの山の方へ横飛し、床で一回転してから立ち上がった。


「今のコイツはリンゴが頭に当たったせいで意識が半分飛んじまって、制御が出来なくなってやがるんだ」

 突っ込んでくるのを止めないアキラの攻撃をギリギリで避けながら蒼空は説明を続ける。


「……詳しい事は後で説明するけど、今のアイツは俺に向けた怒りだけで暴れるバーサーカーだと思っていい!」

「バーサーカー……ねぇ…(汗)
お前さんトコの従業員は、変わった奴が多くねえか?」

 トーマスは座っていた椅子を掴むと、押され気味の蒼空を手助けするために、それをアキラへ向けて放り投げた。

ーー ガシャアああぁん!

 アキラに当たる寸前、ガントレットで力任せに弾き叩かれた椅子はさらに加速して空を切り、建屋の硬い窓ガラスに突き刺さりそれを粉砕した。


「なんだ、アイツのパワーは?!あのごっつい腕ガードに何か細工があるのか?」

 椅子を避けずに叩いて弾いた様を見たトーマスは、蒼空の慌てる理由を少しだけ理解した。
このままでは事態が悪化するかもしれないと判断した彼は、対策を考えるために蒼空に質問を投げかける。


「アイツは万が一に備えて自己暗示を掛けてるんだ。気を失ったり、強い精神的ダメージを受けて動けなくなった時にだけ発動する、リミッター解除の暗示だ!
短時間だが通常の能力の倍の力を発揮するから、まともに組み合うと大変な目に合うぞ!」

「・・・どの位の時間暴れるんだ?」

「その時のコンディションにもよるだろうけど…だいたい5、6分ってとこだ」




「・・・ん?あ、あれ?」

 うずくまっていた森川は、投げナイフが刺さったハズの右脚から痛みが消え、傷も負っていない事に驚いていた。投げナイフが刺さった場所を触ってみるが何も感じられない。


「・・・なんだ?!一体何が起きて……」



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