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仔犬のすてっぷ

第28章 仔犬達の・・・ 


 僕が見なくても説明出来るのは、「力」で見ているから、とかでは無い。
 元々僕は自ら仕掛けて戦うほど八極拳を鍛錬しているわけじゃないから、攻撃に使える技の数が少なくて……結果、蒼空が僕に続いて攻撃する場合も、彼の技が限られてしまうから何をしたのか、大体分かってしまうんだ。


・・・つまり、ソレはトーマスから見て、僕達の攻撃がワンパターンになっていて御し易い事にもなるわけで。

(パターンを変えなきゃ……蒼空からの攻撃を基点にして、僕がトーマスに一撃を加える・・・
けど、僕の相手を倒せる程に打撃力があるのは外門頂肘と裡門頂肘だけで・・・)

 どちらも破壊力はあるけど、外門頂肘は一度使った際にカウンターを入れられ、戦闘不能にさせられて……捕まえられてしまったし、裡門頂肘は相手を捕まえ引き寄せて打つか、カウンターでの大ダメージを狙う場合の技で……連携に組み込むには難しい技だ。



「・・・どうした?もうギブアップ、か?」


 そう言いながらゆっくり歩み寄るトーマスからは、僕が今まで生きてきた中では感じたことの無かった気配を、肌でビリビリと感じていた。
説明されなくても身体がそれを解って、震えを起こしている。

コレは、紛れも無く、僕等に向けられた・・・



ーー 殺気 ーー。



 こんなとんでも無い気配は、チンピラまがいなヤクザに絡まれた時やカツアゲされた時のそれがいかに優しいものだったのか……
いかに僕が平和ボケした国の中で平穏に暮らして来ていたのかを痛感させられるものだった。



……怖い・・・

恐すぎて・・・
トーマスの目を見ることが出来ない・・・・・。


 相手の目の動きを見なければ、動きを読む事が難しくなる。
駄目なのは、分かってる…のに……。



「・・・このくらいの気配でビビっているようじゃあ、お前はここまでって事だな・・・
じゃあ、次は戦場で取っ組み合って殺し合う時のヤツを一回味わってみるか?」


・・・ま、まだ上の殺気がある……?
そんなの受けたら……僕は・・・・・。



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