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仔犬のすてっぷ

第28章 仔犬達の・・・ 


ーー ガツッ!

トーマスの左手が僕の喉元へ伸びた。そのまま大きな手で僕の喉を掴み、軽々と持ち上げる。


「……が…あぐ……げぅ…ぁ…、ぉ……」

く、苦しい……喉が…顎が……


「やっ…止めろおおっ!」

蒼空が必死の表情で飛び込んで来る。僕を何とか開放しようとパンチを繰り出すが右手一本で払い、弾き、往なす。


「・・・オマエはまだ、弱い。今のままだとこの嬢ちゃんは救えねえ……もっと本気を………」

「やあかああしゃああっ!!」

ー ドンッ!

破れかぶれ……かもしれないけど、怒りに任せたショートアッパーが、ガードしていた右手を大きく弾いて、トーマスの体が開いた。


「ーー ここだああぁっ!!」

ガードが外れて空いた間合いに、揺らめきのようなものが残るほどの素早い踏み込みと同時に蒼空の右足が高く上がった。


ーーー ガ、コオォッ!!


トーマスの右肩に渾身の踵落としが振り下ろされ・・・蒼空の足首が掴まれた。

ギリギリィッ・・・・・


「うっ……うがあああぁーーっ?!」

 掴まれた右足首が、簡単にリンゴくらいは握りつぶしそう(……あくまで僕の推測だけど)なゴツイ手で締め上げられ、蒼空が悲鳴を上げた。


「……やれば出来るじゃねえか……だが、今のじゃあ当たってやれねえな。上、下のカカトじゃねえ、早くてもっと体重の乗ったヤツが打てるだろ?」

こっ…こんな……状況で……技の、指南?


「甘い気持ちは捨てろ。じゃねえと嬢ちゃんが壊れるぜ?今から最大の殺気を見舞うんだからな」


僕の喉元が、段々閉まって………

同時に、何かのノイズが頭の中を過ぎった。


(・・・え?……今のは……何?)

霞みだした視界の中心から、何かが僕に向かって拡がっていく・・・・・・。


・・・・・・・・・



な、ん、だ ・ ・ ・ こ、れ ・ ・ ・



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